睨《にら》んだか、私《わたくし》は一言《いちごん》も無《な》いのである。然《しか》し實《じつ》に奇怪《きくわい》な事《こと》ではないか、今《いま》安全信號燈《あんぜんしんがうとう》の輝《かゞや》いて居《を》る邊《へん》の海上《かいじやう》には、確實《たしか》に悲慘《ひさん》なる難破船《なんぱせん》の信號《しんがう》が見《み》えて居《を》つたのに。さては船長《せんちやう》の言《い》ふがごとく私《わたくし》の眼《め》の誤《あやま》りであつたらうか。否《いや》、否《いや》、如何《どう》考《かんが》へても私《わたくし》は白《しろ》、緑《みどり》、紅《あか》の燈光《とうくわう》を星火榴彈《せいくわりうだん》や火箭《くわぜん》と間違《まちが》へる程《ほど》惡《わる》い眼《まなこ》は持《も》つて居《を》らぬ筈《はづ》。して見《み》ると先刻《せんこく》の難破船信號《なんぱせんしんがう》は、何時《いつ》の間《ま》にか安全航行《あんぜんかうかう》の信號《しんがう》に變《かは》つたに相違《さうゐ》ない。さて/\奇妙《きめう》な事《こと》だと、私《わたくし》は暫時《しばらく》五里霧中《ごりむちう》に彷徨《さま
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