達《たつ》する限《かぎ》り島嶼《たうしよ》などのあらう筈《はづ》はない、まして約《やく》一|分《ぷん》の間隙《かんげき》をもつて發射《はつしや》する火箭《くわぜん》及《およ》び星火榴彈《せいくわりうだん》は危急存亡《きゝふそんぼう》を告《つ》ぐる難破船《なんぱせん》の夜間信號《やかんしんがう》※[#感嘆符三つ、75−11]
『やア、大變《たいへん》だ/\。』と叫《さけ》びつゝ私《わたくし》は本船《ほんせん》の右舷《うげん》左舷《さげん》を眺《なが》めた。船《ふね》には當番《たうばん》水夫《すゐふ》あり。海上《かいじやう》に起《おこ》る千|差萬別《さばんべつ》の事變《じへん》をば一も見遁《みのが》すまじき筈《はづ》の其《その》見張番《みはりばん》は今《いま》や何《なに》をか爲《な》すと見廻《みま》はすと、此時《このとき》右舷《うげん》の當番《たうばん》水夫《すゐふ》は木像《もくざう》の如《ごと》く船首《せんしゆ》の方《かた》に向《むか》つたまゝ、今《いま》の微《かすか》な砲聲《ほうせい》は耳《みゝ》にも入《い》らぬ樣子《やうす》、あらぬ方《かた》を眺《なが》めて居《を》る。左舷《さげん》
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