く》の強《つよ》い日本人《につぽんじん》なら、一|番《ばん》拳鬪《けんとう》の立《たち》合ひをせぬか。』と申込《まうしこ》んで來《き》た。
私《わたくし》は拳鬪《けんとう》の仕合《しあ》ひは見《み》た事《こと》はあるが、まだやつた事《こと》は一|度《ど》もない、然《しか》し斯《か》く申込《まうしこ》まれては男《をとこ》の意地《いぢ》、どうなるものかと一|番《ばん》立合《たちあ》つて見《み》たが馴《な》れぬ業《わざ》は仕方《しかた》がない、散々《さん/″\》な目《め》に逢《あ》つて、氣絶《きぜつ》する程《ほど》甲板《かんぱん》の上《うへ》に投倒《なげたふ》されて、折角《せつかく》高《たか》まつた私《わたくし》の鼻《はな》も無殘《むざん》に拗折《へしを》られてしまつた。春枝夫人《はるえふじん》は痛《いた》く心配《しんぱい》して『あまりに御身《おんみ》を輕《かろ》んじ玉《たま》ふな。』と明眸《めいぼう》に露《つゆ》を帶《お》びての諫言《いさめごと》、私《わたくし》は實《じつ》に殘念《ざんねん》であつたが其儘《そのまゝ》思《おも》ひ止《とゞま》つた。一|時《じ》は拳鬪《けんとう》のお禮《れい》
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