位《くらゐ》して、一個《いつこ》の橢圓形《だゑんけい》の觀外塔《くわんぐわいたふ》が設《もう》けられて、塔上《たふじやう》には、一本《いつぽん》の信號檣《しんがうマスト》の他《ほか》には何物《なにもの》も無《な》く、其《その》一端《いつたん》には自動開閉《じどうかいへい》の鐵扉《てつぴ》が設《もう》けられて、艇《てい》の將《まさ》に海底《かいてい》に沈《しづ》まんとするや、其《その》扉《とびら》は自然《しぜん》に閉《と》ぢ、艇《てい》の再《ふたゝ》び海面《かいめん》に浮《うか》ばんとするや、其《その》扉《とびら》は忽然《こつぜん》として自《おのづか》ら開《ひら》くやうになつて居《を》る。艇《てい》の全體《ぜんたい》は盡《こと/\》く金屬《きんぞく》を以《もつ》て構成《こうせい》せられ、觀外塔《くわんぐわいたふ》、上甲板《じやうかんぱん》、兩舷側《りようげんそく》はいふ迄《まで》もなく、舵機室《だきしつ》、發射室《はつしやしつ》、艇員居室等《ていゐんきよしつとう》、すべて一種《いつしゆ》堅強《けんきよう》なる裝甲《さうかう》をもつて保護《ほご》されて居《を》る、此《この》裝甲《さうかう》は現今《げんこん》專《もつぱ》ら行《おこな》はれて居《を》るハーベー[#「ハーベー」に傍線]式《しき》の堅硬法《けんかうほふ》を施《ほどこ》したる鋼板《こうはん》若《もし》くは白銅鋼板等《はくどうこうばんとう》よりは、數層倍《すうそうばい》の彈力性《だんりよくせい》と抵抗力《ていこうりよく》を有《いう》する或《ある》新式裝甲板《しんしきさうかうばん》にて、櫻木海軍大佐《さくらぎかいぐんたいさ》が幾星霜《いくせいさう》の間《あひだ》、苦心《くしん》に苦心《くしん》を重《かさ》ねた結果《けつくわ》、六種《ろくしゆ》の或《ある》金屬《きんぞく》の合成《がうせい》は、現世紀《げんせいき》に於《お》ける如何《いか》なる種類《しゆるい》の彈丸《だんぐわん》又《また》は水雷等《すいらいとう》をもつて突撃《とつげき》し來《きた》るとも、充分《じゆうぶん》之《これ》に抵抗《ていこう》し得《え》て餘《あま》りありと信《しん》じて、其《その》新式合成裝甲板《しんしきがうせいさうかうばん》を、此《この》海底戰鬪艇《かいていせんとうてい》の各要部《かくえうぶ》に應用《おうよう》したのである。
此《この》艇《てい》の外形《ぐわいけい》は以上《いじやう》の如《ごと》くであるが、さて海底戰鬪艇《かいていせんとうてい》が敵艦《てきかん》を轟沈《がうちん》するには、如何《いか》なる方法《てだて》に依《よ》るかといふに、それは二種《にしゆ》の異《ことな》つたる軍器《ぐんき》の作用《さよう》に依《よ》るのである。今《いま》は工事中《こうじちゆう》であるから、明瞭《あきらか》に知《し》る事《こと》は出來《でき》ぬが、其《その》一種《いつしゆ》は艇《てい》の前端《ぜんたん》に裝置《さうち》されたる極《きは》めて強硬《きようこう》なる、また極《きは》めて不思議《ふしぎ》なる「衝角《しやうかく》」一名《いちめい》「敵艦衝破器《てきかんしやうはき》」と呼《よ》ばれたる軍器《ぐんき》で、此《この》衝角《しやうかく》は世《よ》の常《つね》の甲鐵艦《かうてつかん》又《また》は巡洋艦等《じゆんやうかんとう》に裝置《さうち》されたものとは痛《いた》く異《ことな》りて、其《その》形《かたち》は三尖形《さんせんけい》の極《きは》めて鋭利《えいり》なる角度《かくど》を有《いう》し、艇《てい》の前方《ぜんぽう》十七|呎《ヒート》以上《いじやう》に突出《とつしゆつ》して、其《その》鋭利《えいり》なる三尖衝角《さんせんしやうかく》は艇内發動機《ていないはつどうき》の作用《さよう》にて、一秒時間《いちびやうじかん》に三百|廻轉《くわいてん》の速力《そくりよく》をもつて、絞車《こうしや》の如《ごと》く廻旋《くわいせん》するのであるから、此《この》衝角《しやうかく》の觸《ふ》るゝ所《ところ》、十四|吋《インチ》半《はん》以上《いじやう》の裝甲《アーモア》を有《いう》する鐵艦《てつかん》の他《ほか》は、殆《ほと》んど粉韲《ふんさい》せられざるものは有《あ》るまいと思《おも》はるゝ、然《しか》し此《この》三尖衝角《さんせんしやうかく》は、此《この》海底戰鬪艇《かいていせんとうてい》に左程《さほど》著《いちじ》るしい武器《ぶき》ではない、更《さら》に驚《おどろ》く可《べ》きは、艇《てい》[#ルビの「てい」は底本では「てん」]の兩舷《りようげん》に裝置《さうち》されたる「新式併列旋廻水雷發射機《しんしきへいれつせんくわいすいらいはつしやき》」で、此《この》水雷發射機《すいらいはつしやき》の構造《かうざう》の、如何《いか》に巧妙《こ
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