固《けんご》なる七|艘《さう》の海賊船《かいぞくせん》を浮《うか》べて、絶《た》えず其邊《そのへん》の航路《かうろ》を徘徊《はいくわい》し、時《とき》には遠《とほ》く大西洋《たいせいやう》の[#「大西洋《たいせいやう》の」は底本では「太西洋《たいせいやう》の」]沿岸《えんがん》までも船《ふね》を乘出《のりだ》して、非常《ひじやう》に貴重《きちやう》な貨物《くわぶつ》を搭載《とうさい》した船《ふね》と見《み》ると、忽《たちま》ち之《これ》を撃沈《げきちん》して、惡《にく》む可《べ》き慾《よく》を逞《たく》ましうして居《を》るとの話《はなし》。而《そ》して歐米《をうべい》の海員《かいゐん》仲間《なかま》では、此事《このこと》を知《し》らぬでもないが、如何《いか》にせん、此《この》海賊《かいぞく》團體《だんたい》の狡猾《かうくわつ》なる事《こと》は言語《げんご》に絶《た》えて、其《その》來《きた》るや風《かぜ》の如《ごと》く、其《その》去《さ》るも亦《ま》た風《かぜ》の如《ごと》く。海賊《かいぞく》共《ども》は如何《いか》にして探知《たんち》するものかは知《し》らぬが其《その》覬《ねら》ひ定《さだ》める船《ふね》は、常《つね》に第《だい》一|等《とう》の貴重《きちやう》貨物《くわぶつ》を搭載《とうさい》して居《を》る船《ふね》に限《かぎ》る代《かわ》りに、滅多《めつた》に其《その》形《かたち》を現《あら》はさぬ爲《ため》と、今《いま》一つには此《この》海賊《かいぞく》輩《はい》は何時《いつ》の頃《ころ》よりか、利《り》をもつて歐洲《をうしう》の某《ぼう》強國《きやうこく》と結托《けつたく》して、年々《ねん/\》五千|萬弗《まんどる》に近《ちか》い賄賂《わいろ》を納《をさ》めて居《を》る爲《ため》に、却《かへ》つて隱然《いんぜん》たる保護《ほご》を受《う》け、折《をり》ふし其《その》船《ふね》が貿易港《ぼうえきかう》に停泊《ていはく》する塲合《ばあひ》には立派《りつぱ》な國籍《こくせき》を有《いう》する船《ふね》として、其《その》甲板《かんぱん》には該《その》強國《きやうこく》の商船旗《しようせんき》を飜《ひるがへ》して、傍若無人《ぼうじやくむじん》に振舞《ふるま》つて居《を》る由《よし》、實《じつ》に怪《け》しからぬ話《はなし》である。
私《わたくし》は今《いま》、二本《
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