動して止まぬ大流沙がある
それは西南の風に乗つて濛々たる飛砂となり
酷烈にしていつさいの生成に斧をぶちこむ
乾燥亜細亜の一角にきて
彼はこの土地を愛さずにゐられない
目には静かな笑ひを泛べ吃々として物を言ふ
熱すれば太い指先は宙に描がかれ
それはもう造林設計が形の真に迫る時だ
彼は若く充実せる気力にあふれ
喜びも苦しみも
ともに樹々のいのちとあるやうに見える
樹々は彼の幅ひろい胸をとりまき
樹々はみな彼の愛をうけついで向上する
まことに愛は水のやうに滲透する
彼はふり濺ぐはげしい光を浴びながら
さうしてゆつたりと耕地防風林の中に入つてゆく
私は彼とともに人傑地霊を信じる者だ



底本:「現代日本名詩集大成 七」創元社
   1960(昭和35)年11月20日初版発行
※誤植、脱字については、「定本逸見猶吉詩集」思潮社、1966年1月10日初版を参照して確認しました。
※旧仮名遣いの書き方が誤っていると思える箇所がありますが、底本通りにしました。
入力:林 幸雄
校正:小林繁雄
ファイル作成:
2003年1月15日公開
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
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