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火ヲ享ケル
夏ハ光ノ槍ブスマ
屠ラレタ※[#「木+無」、第3水準1−86−12]ノ大樹ノ面ダマシイ
噎ルバカリノ狂ヒヲ深メテギラギラト
山岳地方ノ透明嵐気ガ燃エアガル オオ嵐気ニ千切レタ贖罪ノ館
泡立ツ黒ト緑金ト ソノ怖ロシイウネリヲ重ネテ トメド無ク
毒麦ノ穂ガ逆ニ磔木ノ天上ヘ押シナガサレ
[#天から8字下げ]ハルカニ下ノ世界カラ
[#天から6字下げ]暉石・橄欖石ノ断面ヲ
[#天から4字下げ]イチメン火ノ叫喚ハ掠メテユク
[#天から2字下げ]………………………………燃エアガル
[#ここで字下げ終わり]
燃エアガレヨソノ涯ハ
テツペン大藍青ノイキレニコソ捲キアガル
底シレヌ冽シイ嵐気ノ渦ガ群レテ 深ミドロ光ノ網目ヲ撥ジク刹那ダ
小鳥千羽ハ礫トナツテ墜チテクル
コノ爛酔ノ畏怖ノ時ヲナダレコムノダ
餓エテハ人ラ自ラノ屍ニ乗リアゲテ
馬・鶏ノタグヒハマツシグラ
ナニヲ叫ブカ 血ヲ吹キアゲルママ流サレテ
目盲ヒタルママ黒イ耕地ヲ アア遠ク天来ノ柵ヲ破レバ
タチマチウネリ凄ジイ毒麦ノ昏ク
熾ンナル不断ノ歌声ハ大刈鎌ニ乗ツテ奔騰スル
大刈鎌ニ跨ガレバ 天ハサラニ展カレテ己ト酔ヒ
磔木ノ荒クレタ影ノ裡 諸々ノ凶ナル種子ヲフリ撒カフ
ココニアレ友ヨ
黒ト緑金ノ刺シ違ヒ
ムジンナ光ノ槍ブスマ 夏
畳コム透明嵐気ノマツタダ中ダ
コノ酔ヒニコソ己ハ 悪血ニ噎ル生肉ノ日々ヲ潔メルノダ
胸ヲバンバン晒シテサラニ 苛薄ノ※[#「木+無」、第3水準1−86−12」ニ搏タレヨウ
火ノ飛沫ヲ享ケヨウトスルノダ
海の非情
うねりは深甚な藍青にくろまり
キレの剄い気流のましたを落ちながれ 漂ひ
油然と息をひそめ また一瞬にたかまつて
砕けちり 錯乱する それもあらたに
しづかな凄みの渦を巻きかへし おもひ返して 奈落へと墜ちなだれ うねり
ああ 繰り返しの歯向つてくる無明の表情 これは涯しない肉体だ
この目にみえて 見えるともない怒りこそ永遠の所有から
踏み出す万の手の露はなるつながり
鹹水に裸をさらしていま無尽な夢と格闘の
槍穂の束のぎらぎらに醒め
醒めきれぬまゝに立ち邀《むか》はふとしてゐるが……
うねりはおほまかな足摺りで 灼ける水平から寄せてくる
陸地をむざんに噛んでゐる
神の犬
ぎいんとした岩場の空が死んで視るかぎり
燦々たる微塵群
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