来たしたが、中にも、肉感的美欲を充足させつゝ、それを通して魂の永遠の落付きどころを覗《のぞ》かせるには、感覚的な対象となる宗教的器具設備が最も時機相応であつた。
なま/\しき絶世の美人であつて、而《しか》も無限性を牽出《ひきだ》すもの、こゝに吉祥天《きちじょうてん》、伎芸天《ぎげいてん》、弁財天《べんざいてん》などゝいふ天女型の図像が仏|菩薩《ぼさつ》像流行を奪つて製作され、中の幾つかゞ今日に残り、人間性の如何《いか》に矛盾《むじゅん》であり、また合致総和である意味深いものであるかを考へさせるのであるが、泰松寺にある宗右衛門の見た女菩薩は、身慥《みごしら》へや身構へは菩薩に違ひないが、画図の目的はまさしく前述の時代の天女型に系図をひく古画であらう。
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底本:「日本幻想文学集成10 岡本かの子」国書刊行会
1992(平成4)年1月23日初版第1刷発行
底本の親本:「岡本かの子全集」冬樹社
1974(昭和49)年発行
※底本は、物を数える際や地名などに用いる「ヶ」(区点番号5−86)を、大振りにつくっています。
※ルビを新仮名遣いとする扱いは、底本
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