の俤を連れ出してみようか――今やかの女のむす子を十分な成育へ送り届け、苦労も諸別もしつくしたかの女の母性は、むしろ和やかに手を差し延べてそれを迎え、かの女の夫の逸作の如く、
「君も若いうちに苦労したのだ。見遺《みのこ》した夢の名残りを逐《お》うのもよかろう」
斯《こ》うもかの女にもの分りよく云うであろうか。
君が行手《ゆくて》に雲かかるあらばその雲に
雪積まば雪に問へかしわれを。
君行きて心も冥《くら》く白妙《しらたへ》に
降るてふ夜の雪|黝《くろ》み見ゆ。
底本:「昭和文学全集 第5巻」小学館
1986(昭和61)年12月1日初版第1刷発行
底本の親本:「岡本かの子全集」冬樹社
1974(昭和49)年〜1978(昭和53)年
入力:阿部良子
校正:松永正敏
2001年5月7日公開
2003年7月27日修正
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