の二流れに分れて、さらさらと擦れ違って行く。すると、それがいかにも歓《よろこ》びに溢《あふ》れ、青春を持て剰《あま》している食後の夜の町のプロムナードの人種になって、特に銀座以外には見られぬ人種になって、上品で綺羅《きら》びやかな長蛇のような帯陣をなして流れて行く。
「やあ」
「よう!」
「うまくやってる」
「どうしたん?」
「しばらく」
きれぎれに投げ散らされるブールヴァル言葉が、足音のざわめきにタクトされつつ、しきりなしに乱れ飛ぶ。扇屋、食料品店、毛皮店、組紐屋《くみひもや》、化粧品屋、額縁店等々の店頭の灯が人通りを燦めかせつつ、ときどきの人の絶え間に、さっとペーヴメントの上へ剰り水のように投げ出される。
いつか、人混の中へ織り込まれていたかの女は、前後の動きの中に入って却《かえ》って落着いた。「藻掻《もが》いてもしようがない。随《つ》いて行くまでだ」都会人に取って人混は運命のような支配力を持っていた。薄靄《うすもや》を生海苔《なまのり》のように町の空に引き伸して高い星を明滅させている暖かい東南風が一吹き強く頬《ほお》に感ずると、かの女は、新橋際まで行ってそこから車に乗り、早く
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