条もの傷を手の甲に拵《こしら》へながら、口惜しさに夢中で薄《すすき》の穂をもぎ折つた幼い頃の記憶を私は秋になるとなつかしく想ひ出す。そのなつかしい気持ちの底には強くて鋭いものに対する稚純な敵意よりもなほさら私のこゝろにふかく沁みついてゐる刈萱の穂の銀灰色の虚無的な寂しい風趣なのである。[#地付き](昭和一二年一〇月)
底本:「花の名随筆9 九月の花」作品社
1999(平成11)年8月10日第1刷発行
底本の親本:「岡本かの子全集 第十三巻」冬樹社
1976(昭和51)年11月第1刷発行
入力:門田裕志
校正:林 幸雄
2002年5月7日作成
青空文庫作成ファイル:
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