を書いた手紙が来る――君は重光君と結婚したまえ」
 簡単ながら決定的な文意であった。
 かの女は今更別だんの衝動も心にうけなかった。――まあ、私に云わないで兄さんに云った――かの女はごくあたりまえにこう内心で独り言を云っただけだった――そして普通の友人の絵でも見に行くように重光青年から招待されて、上野の展覧会場へその秋の傑作の一つと評判の高い「高原の太陽」と題する青年の出品画を観に行った。



底本:「岡本かの子全集3」ちくま文庫、筑摩書房
   1993(平成5)年6月24日第1刷発行
底本の親本:「老妓抄」中央公論社
   1939(昭和14)年3月18日発行
初出:「むらさき」
   1937(昭和12)年6月号
入力:門田裕志
校正:noriko saito
2010年1月25日作成
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
前へ 終わり
全10ページ中10ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
岡本 かの子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング