を賭《か》けるようにして、河上を探りつつ試みたあの土俗地理学者との恋愛の話の味い、またその娘が遂《つい》に流れ定って行った海の果の豊饒《ほうじょう》を親しく見聞して来た私には、河は過程のようなものでありながら、しかも首尾に対して根幹の密接な関係があることが感じられる。すればこの仄《ほの》かな河明りにも、私が曾《かつ》て憧憬していたあわれにかそけきものの外に、何か確乎《かっこ》とした質量がある筈である――何かそういうものが、はっきり私に感じられて来ると、結局、私は私の物語の娘の性格の更生に、始めから私の物語を書き直す決意にまで、私の勇気を立至らしめたのである。
底本:「昭和文学全集 第5巻」小学館
1986(昭和61)年12月1日初版第1刷発行
底本の親本:「岡本かの子全集 第四巻」冬樹社
1974(昭和49)年3月18日初版第1刷発行
※疑問箇所の確認にあたっては、底本の親本を参照しました。
※「木下はなお南洋の海に就《つ》いて語り続ける。」は、底本でも、底本の親本でも改行天付きになっています。
入力:阿部良子
校正:松永正敏
2004年1月30日作成
青空文庫作成ファイル:
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