フ上に情熱の淨《きよら》かな行手を示し、
おおそしてそして、此の名もない路傍の墓石は、墓石は、
わたしの生のため深い慰めを與へる……
[#地から1字上げ]8 ※[#ローマ数字4、1−13−24] 3
恢復
人生は苦難と愛の庭、
荒い心に温柔をつつみ、
眞茂《ましげ》る木《こ》の葉に紅《あか》い實點々と、
秋の日照りに槇の並樹の、
逞しく足を揃へるその苔青い幹。
やがては冬來り、葉は落ち、
枝はささくれ立ち、
あの險《けは》しくも白眼《しろめ》をした雪もよひの空、
寒い雨、
地《ち》凍《こご》る霜の夜明け、
君の呻《うめ》きは細枝《さえだ》をふるはし、低い空を嘯《うそぶ》かう。
缺乏の黒い感情、
苦痛に充ちた忘失の眼、
この身にふりかかる苦しみの出所は何?
やがては池の氷も黒ずみ、
廣い畠地《はたち》は割れ、
さびしくも小鳥鳴き、
天地ことかはる季節のさかひに、
君はその時見ぬか、ああ見ぬか、暗く嚴かに淋しくまた賑かな春と冬との分れ目を!
空は暗く、風は低く、日は短く、
しかし何處《いづこ》にか胸にはらむ恢復の希望……
[#地から1字上げ]8 ※[#ローマ数字4、1−13−
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