に寝転んで、猫を顔の上へあげて来る。二本の前足を掴んで来て、柔らかいその蹠《あしのうら》を、一つずつ私の眼蓋《まぶた》にあてがう。快い猫の重量。温かいその蹠。私の疲れた眼球には、しみじみとした、この世のものでない休息が伝わって来る。
仔《こ》猫よ! 後生だから、しばらく踏み外《はず》さないでいろよ。お前はすぐ爪を立てるのだから。
底本:旺文社文庫『檸檬・ある心の風景』
1972(昭和47)年12月10日初版発行
1974(昭和49)年第4刷
入力:j.utiyama
校正:高橋美奈子
1999年1月11日公開
1999年8月22日修正
青空文庫作成ファイル:
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