のなすことは今はただ嘲《あざけ》りの笑を招くばかりである。
私はよく知っている、嘲りの下に隠れた或ものを。
そして私は恐れない。
(中略)
――私どもは隠されたる我が太陽を今や取戻さねばならぬ。
[#ここから2字下げ]
わたくしは新らしい女である。わたくしは太陽であると、らいてうさんは叫んだ。
「新らしい女」という名が、讃美、感嘆、中傷、侮辱、揶揄《やゆ》と入り交って、最初は青鞜社員から社友に、それからは一般の進歩的婦人の上にふりそそがれた。
『青鞜』は最初、社会的に全然地位も自由ももたない婦人たちが、文芸を通じて心の世界に自由を求め、そこに自分の生命を見出そうと、中野初子《なかのはつこ》(日本女子大学国文科出身)木内錠子《きうちていこ》(同)保持研子《やすもちよしこ》(同)物集和子《もずめかずこ》(夏目漱石門人・物集博士令嬢)平塚明子《ひらつかはるこ》(日本女子大学家政科出身)の五人の発起だった。
 この人たちの勇気と決心は、婦人解放運動の炬火《きょか》となったのだ。
『青鞜』の編輯は、最終のころは、伊藤野枝さんにかわっていた。野枝さんは後に大杉栄《おおすぎさかえ》氏夫人となって、震災のおり×されてしまった。
この附記は、らいてうさんの出発点をよく知らぬ人のために、蛇足《だそく》かもしれぬが記《しる》しておく。
[#ここで字下げ終わり]



底本:「新編 近代美人伝(上)」岩波文庫、岩波書店
   1985(昭和60)年11月18日第1刷発行
   1993(平成5)年8月18日第4刷発行
底本の親本:「近代美人伝」サイレン社
   1936(昭和11)年2月発行
初出:「婦人画報」
   1922(大正11)年9月
※編集部の付けた註は除きました。
入力:門田裕志
校正:noriko saito
2007年4月10日作成
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
前へ 終わり
全8ページ中8ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
長谷川 時雨 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング