ないからなぞと、話はみんなが口を出して混線した。
處女は鉢卷をしてゐるのが印《しる》しで、白い貝が額のところにつけてあるので、強い日光にキラキラとして眼に立つといふことだがと、私は聞いたままを續けた。
――美人は、縮れつ毛で、凄いやうに髮の毛がおつたつてるんだつて。
――あははは、パーマネントを逆立てるのがはやつたら大變だ。みんな不動さまスタイルになつちやふ。
――パプーアつて、チヂレツ髮つていつてるんだつて、其島でも。
そこで私は、毛の薄い、昔の軍學者のやうな、春子|畫孃《ぐわぢやう》の耳きはのパーマネントを見ながら、鰐のことにかへつた。
――そこの土人でさへ、鰐は厭がるんだつて。拍手《かしわで》を打つてをがんで、退《ど》いてもらつてから、水へおりるんだつて。そんな氣味の惡い顏、見ててくれる?
[#地から2字上げ](「東京日日新聞」昭和十二年八月十一日)
底本:「桃」中央公論社
1939(昭和14)年2月10日発行
初出:「東京日日新聞」
1937(昭和12)年8月11日
入力:門田裕志
校正:仙酔ゑびす
2009年1月17日作成
青空文庫作成ファイル:
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