問氏は、算盤《そろばん》をはじきだした。
出るな、と見込んだからでは決してあるまいが、そうなるとお雪派の策士は、ますますもって四万円即金を頑張《がんば》る。
ジョージ・モルガン氏、お雪さんを見初《みそ》めたのは、勘平さんの年ごろだったが、その時卅四歳、纏《まと》まりそうでなかなかまとまらないのでオスヒスとなって、ある晩、ピストルをポケットに忍ばせ、
「こんなにスローモーションでは堪《たま》りません。蛇《へび》の生殺《なまごろ》しというものです。それというのも、お雪さんの心がぐらついているからです。わたしは死にます。」
それは全く真剣だったので、お雪は途方に暮れてしまった。
「あなたを、そんなに苦しめるのもあたしからですから。」
と、止めていたお雪の方がヒステリックになって、川の岸に立った。どっちたたずの身の、やる瀬なさに、身を投げて死んでしまおうとしたのだ。
顧問博士もびっくらしたのであろう。早速四万円を取り寄せることになった。
そんなこんなが、古風な祇園町の廓中を震撼させた。
「まあ、お雪はんのこと聞きなはったか?」
と、寄るとさわるとその噂だ。
「四万円だっせ。」
豪儀
前へ
次へ
全41ページ中27ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
長谷川 時雨 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング