聞記事を見て、ふと前進座で光秀をやりたいとも思う。いッそエノケンの孫悟空と逃げて満州辺へロケに来てやろうかとも考えたり、とりとめが無い。
 次に食いたい物いろ/\と書く。
 わさび漬。味の素。うに。うなぎの蒲焼(鑵詰)ライスカレー(同上)あずきようかん(同)栗のきんとん(同)ほーじ茶、ココア、角砂糖(斯うたくさんは食えんわい)小包は厳重にして置いて呉れ。
 くだらん事、いろ/\と書いた。退院までにまた書くつもり。
 それから去る四月一日付をもって山中伍長は軍曹に進級しとるからそのつもりで。
 諸兄によろしく
  八月九日
   建坊大兄



底本:「山中貞雄作品集 全一巻」実業之日本社
   1998(平成10)年10月28日初版発行
初出:「中央公論」
   1938(昭和13)年12月号
※底本の註は、初出時に付されたものと思われますが、筆者を確認できなかったので入力しませんでした。
※底本は、物を数える際や地名などに用いる「ヶ」(区点番号5−86)を、大振りにつくっています。
入力:野村裕介
校正:伊藤時也
2000年2月18日公開
2003年10月27日修正
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
前へ 終わり
全10ページ中10ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
山中 貞雄 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング