とろか》すべきの法を以てし、かくのごとくして、吾人をして、今や衰境に陥《おちい》れるラテン民族の如くに美しからしむるを可なりとせん。
されど今の時は夢に耽《ふけ》り、あるいは平凡なる歌を唸り、または利己的勉学を恣《ほしいまま》にすべきの時ならず。アア「北より吹き来る風は、吾らが耳に鳴り轟《とどろ》く武具の響を伝えん」ものを。益荒武夫《ますらたけお》の雄心は吾らが父母の遺せる最も尊き賜なるぞかし。吾人は近く文相が訓示して、人格を作るを以て、我が教育策の大主旨となすべしといえるを聞く。この思想が将来、何程に発達し、幾許《いくばく》の実効を齎《もたら》し来るや、吾人は皿大の眼を張りてこれを注視せんとす。
[#地から1字上げ]〔一九〇七年八月一五日『随想録』〕
底本:「新渡戸稲造論集」岩波文庫、岩波書店
2007(平成19)年5月16日第1刷発行
底本の親本:「随想録」丁未出版社
1907(明治40)年8月15日
初出:「英文新誌 一巻一七号」英文新誌社
1904(明治37)年3月1日
入力:田中哲郎
校正:ゆうき
2010年3月25日作成
2010年6月14日修正
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