はないのである。ショーペンハウエルの哲学は、この点で僕等の心理を捉え、孤独者の為に慰安の言葉を話してくれる。ショーペンハウエルの説によれば、詩人と、哲学者と、天才とは、孤独であるように、宿命づけられて居るのであって、且つそれ故にこそ、彼等が人間中での貴族であり、最高の種類に属するのだそうである。
しかし孤独で居るということは、何と云っても寂しく頼りないことである。人間は元来社交動物に出来てるのだ。人は孤独で居れば居るほど、夜毎に宴会の夢を見るようになり、日毎に群集の中を歩きたくなる。それ故に孤独者は常に最も饒舌の者である。そして尚ボードレエルの言うように、僕もまたそのように、都会の雑沓の中をうろついたり、反響もない読者を相手にして、用にも立たぬ独語などをしゃべって居る。
町へ行くときも、酒を飲むときも、女と遊ぶときも、僕は常にただ一人である。友人と一緒になる場合は、極く稀れに特別の例外でしかない。多くの人は、仲間と一緒の方を楽しむらしい。ただ僕だけが変人であり、一人の自由と気まま勝手を楽しむのである。だがそれだけまた友が恋しく、稀れに懐かしい友人と逢った時など、恋人のように嬉しく離
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