竟人が孤独で居るのは、周囲に自分の理解者が無いからである。天才が孤独で居るのは、その人の生きてる時代に、自己の理解者がないためである。即ちそれは天才の「特権」でなくて「悲劇」である。
 とにかく僕は、最近漸くにして自己の孤独癖を治療し得た。そして心理的にも生理的にも、次第に常識人の健康を恢復して来た。ミネルバの梟は、もはやその暗い洞窟から出て、白昼を飛ぶことが出来るだらう。僕はその希望を夢に見て楽しんでゐる。



底本:「日本の名随筆 別巻35 七癖」作品社
  1994(平成6)年1月25日第1刷発行
底本の親本:「萩原朔太郎全集 第九巻」筑摩書房
   1976(昭和51)年5月発行
入力:加藤恭子
校正:門田裕志、小林繁雄
2005年5月3日作成
青空文庫作成ファイル:
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