けとによつて、何人も意識的に人相を変へ、悪しき手相を善き手相にし、自由に運命を支配し得ることを弁解する。かくも辻ツマの合はない非論理を、彼等は平然として言ふのである。「宿命のプログラムは、星の運行と共に決定されてる。だが人々は、それを予め自覚することによつて、来るべき災難を未然に防ぎ、大厄を小厄にし、幸運のチヤンスを捉へ、すべてに於て将来を賢明に用意し得る」と。それからして演繹し、彼等一流の運命開拓法を説くのである。「君の今度の旅行は、東南に向つて出発なさい。必ず幸運が待つて居り、一挙にして大金が手に這入る。君の過去の不幸は、丑寅の方位に当る南天の樹の祟りであつた。よろしく速かに伐りなさい。必ず運命が一新する」等々。げに易者の哲理ほど、都合よく詭弁されたものはない。



底本:「日本の名随筆82 占」作品社
底本の親本:「萩原朔太郎全集 第五巻(補訂版)」筑摩書房
   1987(昭和62)年2月
入力:土屋隆
校正:noriko saito
2006年9月18日作成
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
前へ 終わり
全2ページ中2ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
萩原 朔太郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング