△堤防の破壞[#「堤防の破壞」に丸傍点]
止むことを得ない堤防の御話も少々しなければなりませぬが、谷中村に對する堤防丈の御話を致しますと、谷中村と云ふ村は尤も周圍が堤防で、三里十八町を堤防を以て巡つて居る、赤間沼と云ふ沼がある、之が淺い、是がどうも壞れ易くなつて居る、けれども私が近來見まするに左程至難な堤防ではない、何となれば斯う云ふことがございます、三十五年に堤防が切れました、時に縣會が議決しまして其切付けを防ぐに付いて追々に金を支出致しました、僅か八十五間の切付けを防ぐに付いて縣會が金を出しましたのが三度に十萬圓の金を出した、十萬圓の金を三十六七年に掛けて十萬圓の金を出して僅なる八十五間の切口が塞ぎ得なかつた、夫から八十五間の口が十萬圓の金で塞ぎ得ないと云ふ評判を私共聞いて其所へ參つて見ますと云ふと、如何にも口が塞ぎ切れぬで、左右の堤防が八百間許り波で壞れて居る、酷い有樣に壞れて居るから之は成程波の荒い所だ、成程十萬兩掛けて此僅か八十五間の口が塞げぬ所で仕樣がないと私も欺された、三十七年に參つて更に其波の荒きことに驚いた、如何にも堤防を築くに骨が折れるなと私も一度欺かれた
前へ
次へ
全52ページ中28ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
田中 正造 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング