たきを、彼《か》の人《ひと》あらば如何《いか》ばかり言《い》ふ甲斐《がひ》なく浅《あさ》ましと思《おも》ふらん、など打返《うちかへ》し其《その》むかしの恋《こひ》しうて無端《そゞろ》に袖《そで》もぬれそふ心地《こゝち》す、遠《とほ》くより音《おと》して歩《あゆ》み来《く》驍竄、なる雨《あめ》、近《ちか》き板戸《いたど》に打《うち》つけの騒《さわ》がしさ、いづれも淋《さび》しからぬかは。老《おい》たる親《おや》の痩《や》せたる肩《かた》もむとて、骨《ほね》の手《て》に当《あた》りたるも斯《かゝ》る夜《よ》はいとゞ心細《こゝろぼそ》さのやるかたなし。



底本:「日本の名随筆43・雨」作品社
   1986(昭和61)年5月25日第1刷発行
   1991(平成3)年10月20日第10刷発行
入力:加藤恭子
校正:浦田伴俊
2000年8月19日公開
青空文庫作成ファイル:
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