ていたよりも、もっと多様複雑になるのである。これらの音が平安朝においては濁音二十を除いて四十八音から四十七音、更に四十四音と次第に減少し、音の構造も、大体五種の母音と九種の子音を基礎として、母音一つか、または子音一つと母音一つから構成せられるようになって、前代よりも単純化したのである。この傾向から察すると、逆にずっと古い時代に溯れば、音の種類ももっと多く、音を構成する単音の種類や、音の構造も、なお一層多様複雑であったのではあるまいか、すなわち、我々の知り得る最古の時代の音韻組織は、それよりずっと古い時代の種々の音韻が、永い年月の間に次第に統一せられ単純化せられた結果ではあるまいかと考えられるのである。



底本:「古代国語の音韻に就いて 他二篇」岩波文庫、岩波書店
   1980(昭和55)年6月16日第1刷発行
   1985(昭和60)年8月20日第8刷
底本の親本:「国語音韻の研究(橋本進吉博士著作集4)」岩波書店
   1950(昭和25)年
入力・校正:久保あきら
1999年11月16日公開
2003年6月15日修正
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