とがあり(イとヰは古くは別の音であったのが、後には共にイの音となって区別が失われた)、前代に一つの音であったものが後代には二つの別の音にわかれることもある(「うし」の「う」と「うま」の「う」とは古くは同じウの音であったが、「うま」の場合は後には「ンマ」の音に変じて、ウとンと二つの音になった)。また、或る音韻が後代においては全くかわった音になるものもある(「ち」は古くはtiの音であったが、後には現代のごときチの音になった)。かように箇々の音の変化によって、あるいは数を増しあるいは数を減じ、あるいは一の音が他の音になって、前代とはちがった音韻組織が生ずるのである。
 既述のごとく、箇々の語のような、意味を有する言語単位の外形は、以上のような音または音韻の一つで成立つかまたは二つ以上結合して成立つものであるが、その場合に、或る音は語頭、すなわち語の最初にしか用いられないとか、または語尾、すなわち語の最後にしか用いられないとかいうようなきまりがあることがある。これを語頭音または語尾音の法則という。また、或る音と或る音とは結合しないというようなきまりがあることがある。これを音結合の法則という。ま
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