した国語の音韻組織は、大体右の資料によって推定せられるので、これを第一期の終なる奈良朝の音韻と比較して得た差異は、大抵第二期において生じた音変化の結果と認めてよかろうから、その変化がいつ、いかにして生じたかを考察すれば、第二期における音韻変遷の大体を知り得るであろう。
(一) 奈良朝時代の諸音の中、二音が後の仮名一つに相当するものは、「え」の仮名にあたるものを除くほかは、すべて、平安朝初期においては、その一つが他の一つと同音になり、その間の区別がなくなってしまった。そうしてその音は、これにあたる仮名の後世の発音と同じ音に帰したらしい(ただしその中、「ひ」「へ」にあたるものはフィフェとなった)。かようにして、「き」「け」「こ」「そ」「と」「の」「ひ」「へ」「み」「め」「よ」「ろ」「ぎ」「げ」「ご」「ぞ」「ど」「び」「べ」の一つ一つに相当する二音が、それぞれ一音を減じて、これらの仮名がそれぞれ一音を代表するようになった。この傾向は奈良朝末期から既にあらわれていたが、平安朝にいたって完全に変化したのである。
(二) 「え」にあたる二つの音、(すなわちア行のエとヤ行のエ)の区別は、平安朝に
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