やらうと思つて一生懸命になつたんだから、まあその志だけで澤山さ。とにかく去年は苦しかつたが、それが昔話になつたのは目出たいな。
ノラ ねえ、すてきですわね。
ヘルマー もう私もこゝに坐つて、獨りで退屈してる必要もなし、お前だつてその可愛らしい目や細つそりした指で夜通しかゝつてクリスマスの飾りをこしらへる必要もなしさ。
ノラ (手を打ちながら)えゝ、そんな必要もなくなりましたわねえ、全く考へるとすてきですわ(男の腕を取り)だから私、今日はあなたにお話しますわ、これから先どういふ風にやつて行くかといふ私の考へを、ね、クリスマスがすむと――(廊下の入口のベルが鳴る)ベルが鳴つてよ(室内を片づけながら)誰かきたんですよ、うるさいわね。
ヘルマー 俺は留守のことにして置くのだよ、忘れちやいけないよ。
エレン (室の入口で)奧さまご婦人の方がお出でになりまして、お目に掛りたいとおつしやいます。
ノラ 誰だらう? お通しして。
エレン (ヘルマーの方へ)それからお醫者さまも、いらつしやいました。
ヘルマー 書齋の方へか?
エレン はい。
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(ヘルマーは書齋に入る。エレンが旅行服
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