マスが樂にできるやうになつたんですもの。
ヘルマー おい/\、無駄にお金を使つちやよくないな。
ノラ いゝぢやないの(ヘルマーにすがる)少しでいゝから無駄使ひをさして頂戴、極少しでいゝから、ね? あなた、今に山ほどお金を儲けるんぢやありませんか。
ヘルマー そりや新年からはさうだが、しかし給料の手に入るまでには、まだまる三月もあるからな。
ノラ 構ふもんですか、その間借金して置けば。
ヘルマー ノラ! (女の方へ行つて戲れに耳を引つ張り)相變らず暢氣だなあ。まあ假に今私が五百クローネも借りたとするぜ、それをお前がクリスマスの間に使つてしまふ、そして年越しの晩に屋根から瓦が落ちてきて俺の腦天を割つたとする――
ノラ (男の口に手を當てゝ)嫌よ/\! 何て嫌なことをおつしやるの(自分の耳をふさぐ)
ヘルマー まあさ、さうなつたと假定する――さうするとどうなるだらう?
ノラ そんな大變な騷ぎになつちや借金のことなんか考へてやしません。
ヘルマー けれども貸した人はどうする?
ノラ 貸した人? 誰が構ふもんですか、赤の他人ぢやありませんか。
ヘルマー こら、ノラ! お前は何といふ女だ、まあ眞面
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