。
ドノバン(米)サービス(仏)ウエップ(独)グロース(米)の四人は毎日銃をかたにして、森や沼をさがしまわっては、必ず多少の小鳥をうって帰った。ある日かれらは、湖畔《こはん》にそうて一キロメートルばかり北の森のなかにはいってゆくと、そこに人の手をもってほったとおぼしき深い穴がいくつもあるのを見た。穴の上にはちょうどおとし穴のように、表面だけ木の枝や草などを縦横《じゅうおう》にかけわたしてある、そのなかの一つの底には、動物の骨のようなものがちらばってある。
「なんだろう」
とサービスがいった。
「たぶん山田先生がけものをとるためにほったおとし穴だろう」
「そうかね」
サービスは腕をくんでしばらく考えてからいった。
「それじゃ、この穴をかくしておこうじゃないか、ひょっとしたらなにか大きなけものがひっかかるかもしれないよ」
「そんなことがあるもんか、ぼくらがこうして毎日鉄砲をうつから、けものは遠くへ逃げてしまったよ」
「だが、どうかしてくるかもしらない」
サービスは三人の笑いをよそにして、一生けんめいに木の枝を運んで穴をかくした。
天気は日ましに寒いが、湖や川が結氷《けっぴょう》するほどではなかった。幼年組は毎日水辺へいって魚をつった。そのためにモコウの台所には魚のない日はなかった。
だがここにこまったのは物置きのないことであった。どこか岩壁《がんぺき》のあいだに適当《てきとう》な物置き庫《ぐら》がなかろうかと富士男は四、五人とともに、北方の森のなかをさがしまわった、するととつぜん異様《いよう》のさけびがいんいんたる木の間にきこえた。
「なんだろう」
一同はすぐ銃口《じゅうこう》をむけて身がまえた、そのなかに富士男とドノバンはまっすぐに声のほうをさして進んだ。と見ると、そこはかつてサービスが木の枝をむすんでかくしておいた、穴のほとりであった。
声はまさしく穴の底である。縦横《じゅうおう》にわたした枝はくずれおちて、なんとも知らぬ動物が、おそろしい音を立ててくるいまわっている。
「なんだろう」
ドノバンがいうまもなく、富士男は声高くよんだ。
「フハン、フハン、ここへこい」
主人の声をきいたフハンは、矢のごとく走ってきた、かれは主人の顔をちょっとながめて、すぐ穴のはしから底を見おろした、とたんに電光《でんこう》のごとく穴のなかへおどりこんだ。
「みんなこい
前へ
次へ
全127ページ中30ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
佐藤 紅緑 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング