富士男の日記はこのページから厳封《げんぷう》されて読むことができないから、著者からさらにその夜のできごとを報道することにしよう。
 河口にボートをつないで、三人は、とちゅうで撃《う》ったしゃこを焼いて晩|飯《めし》をすました、六時は過ぎたが進潮《でしお》まではまだ三時間もあるから、モコウはストーンパインを採集《さいしゅう》して諸友へのおみやげにしようと森のなかへはいった。
 背中に重さを感ずるほどストーンパインをおうてボートへ帰ると、富士男と次郎のすがたが見えない。
「はてな、めずらしい草でも採集してるのだろうか」
 モコウがこう思いながら深い草を分けてゆくと、とつぜん大きな木の下から次郎の泣き声がきこえた。
 おや! と思うまもなく富士男のしかる声、
「なんということをしたのだ、それでおまえは良心にはじるから、ふさぎこんでいたのだね」
「ごめんなさい、兄さん、ぼくが悪かったのです」
「悪かったというだけではすまないじゃないか、みんながこんなに難儀《なんぎ》するようになったのも、おまえが悪かったからだ、こんなはなれ島にみんなを……」
「ごめんなさい、だからぼくはみんなのためにはいつでも命《いのち》をすてます」
「そうだ、おまえはおまえの罪《つみ》をあがなわなきゃならんぞ」
 モコウはがくぜんとしてそこを去ろうとした、がそれはすでにおそかった。次郎がおかした罪のしさいを、すでに、ことごとく聞いてしまったのだ。兄弟の永久の秘密を!
 人の秘密を立ち聞きするほど卑劣《ひれつ》な行為はない、しかも主人兄弟の秘密である。さりとて聞いてしまったうえは、もはやとりかえしがつかぬ。モコウは足をしのばしてボートへ帰り、ひとり出発の準備をしていると、やがて富士男がひとりもの思わしげに帰ってきた。
「次郎さんは?」
 とモコウがきいた。
「次郎はいまうさぎを撃っている」
 富士男はこういってボートにはいった。
「富士男さん!」
 モコウはとつぜん富士男の前にひざまずいた。
「ぼくはひじょうに悪いことをしました」
「なんだきみは?」
 富士男はおどろいてモコウの顔を見た。
「ぼくはいま木の陰《かげ》へゆきましたら、聞くともなしに次郎さんの告白《こくはく》を聞きました」
「聞いたか?」
 富士男の顔は、さっと青白くなった。
「聞きました、聞くつもりでなかったけれども聞きました。ですが富
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