とうとしたが小さいのでとどかなかった。かれはおどり上がった。が足の痛みがますますはげしい。かれは手塚に首根をおさえられた。手塚は力まかせにチビをなぐった。なぐられながらチビは手塚の手をしっかりとつかんではなさない。
「だいじょうぶか柳」とチビが苦しそうにいった。
「だいじょうぶだ。青木、すまないな」と光一はいった。そうしてもののみごとにろばを大地にたたきつけた、その拍子《ひょうし》にかれは片ひざを折った。三人はその上におりかさなった。
「なにを……くそッ」
 こういう光一の声はおぼつかなく聞こえた。
「やられたな」
 こうチビは思った。とたんに手塚の手がぐたりとゆるんだ。と思うやいなや手塚はさながら犬の屍《しかばね》のごとくたたきつけられた。
「青木じゃないか」
「ああ安場さん」
「うむ、おれだ」
「柳を助けてください」
「よしッ」
 安場がひらりと動いた。ふたりの姿がもんどりうって倒れた。いまひとりは光一がしっかりとひざに組みしいていた。
「しばれしばれ」と安場がいった。
「しばるものがない」
「ふんどしでしばれ」
「ぼくはさるまただ」
「心がけの悪いやつだ」
「安場さんのは?」
「おれは無フンだ」
 千三はまたしても帯をといて手塚をしばりあげた。投げられたろばといまひとりは安場がしばった。安場は三人を電柱にしばりつけた。
 光一の横顔は腫《は》れ、手首はくじかれていた。千三にはなんのけがもない。
「おい青木」と光一は千三の前にひたと座っていった。「おれをなぐってくれ、おれは悪かった、さあおれがきみにしたようにおれの顔のどこでもなぐってくれ」
「なにをいうか柳」と千三は光一にひたとより添うて手をしっかりとにぎった。
「ぼくは今夜きみの演説で真の英雄がわかった、ぼくらはおたがいに英雄じゃないか、正義の英雄だよ」
「ゆるしてくれるか」
「ゆるすもゆるさんもないよ」
「ありがとう」
 ふたりはふたたび手をにぎりしめた。
「やい、凡人主義のデモクラシーの偶像破壊者共」と安場は三人に向かっていった。
「平等と自由はどんなものか明日《あした》の朝までそこで考えて見ろ」
「なわだけはといてやってくれ」と光一が安場にいった。
「いやいや」と安場は頭をふった。「英雄にしばられてなわをとくのはデモクラシーの役目なんだ、さあゆこう」
 こういって安場はマッチをパッとすって三人の顔を見た
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