正義の国と人生
桐生悠々
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ゴオリキの「どん底」に現われた不思議な老人ルカの話によると、シベリアに「非常に貧乏で、惨な暮らし」をしていた或男が、「正義の国」を求めていた。この正義の国には「特別な人間」が住んでいて、しかも「立派な人間ばかりで、互に尊敬し合い、どんな些細なことにも助け合う」国であった。そしてこの男は、絶えずこの正義の国を探しに行く用意をしていたが、さなきだに貧乏だった彼は、これがためにますます貧乏となり、結局「寝たまま死を待つより外のない、どん底な生活に陥ってしまった」。でも、彼は落胆しないで何処かに「正義の国」があることを信じて、そこへ行こうとしていた。
或時、このシベリアに一人の学者が流れ込んで来た。この男は早速この学者を探ねて「正義の国」は何処にあるか教えてくれ、そしてそこへ行く道を教えてくれとたのんだ。「学者は早速書物を開いた。地図を広げた……探しも探したが、正義の国はどこにもない。ほかの事は皆きちんと書かれてあるが、正義の国は
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