言いたい事と言わねばならない事と
桐生悠々
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)人|動《やや》もすれば、
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)人|動《やや》もすれば、
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)[#地付き]
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人|動《やや》もすれば、私を以て、言いたいことを言うから、結局、幸福だとする。だが、私は、この場合、言いたい事と、言わねばならない事とを区別しなければならないと思う。
私は言いたいことを言っているのではない。徒に言いたいことを言って、快を貪っているのではない。言わねばならないことを、国民として、特に、この非常時に際して、しかも国家の将来に対して、真正なる愛国者の一人として、同時に人類として言わねばならないことを言っているのだ。
言いたいことを、出放題に言っていれば、愉快に相違ない。だが、言わねばならないことを言うのは、愉快ではなくて、苦痛である。何ぜなら、言いたいことを言うのは、権利の行使であるに反して、言わねばならないことを言うのは、義務の履行だからである。尤も義務を履行したという自意識
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