さんがそれをお聞きになりましたのか、にわかに宇治から京へ迎えようとなすって、監視の人などをきびしくお付けになりましたころに、宮様はまたおいでになったのでございますが、家の中へおはいりになることができませんで、危険なことでございますが、お馬のままで外に立っておいでになり、それなり帰っておしまいになったということでございまして、女も宮様をお慕いしていたのでしょうか、にわかに行くえがわからなくなりましたのを、川へ身を投げたのであろうと、乳母《うば》というような者が泣き騒いで言っていたそうでございます」
大納言の君はこんな話を申し上げた。中宮がお驚きになったことは言うまでもない。
「だれがまあそんな噂話《うわさばなし》をしていたの、ほんとうにかわいそうな話ではないか。そんな出来事はすぐ噂になるものだのに、そうでもなし、また大将もそんなふうには話さずに、人生の悲哀を強調して話すだけで、また宇治の宮さんの一族が皆短命で死ぬのは悲しいことだとは言っていたけれども」
「ほんとうでございますか、どうでございますか、しもざまの者は確かでないこともほんとうらしく話にいたすものですが、その宇治の山荘におりま
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