ころにいて悲しみの休む間《ひま》もないのである、その娘もまたどうなることかと不安だったがそれは安産した。穢《けが》れがあってはこれも見に行くことができないのである、そのほかの子供たちのことも皆忘れたようになり、茫然《ぼうぜん》としている時に右大将からそっと使いが来て手紙をもらった。ぼけている心にもそれはうれしかったが、また悲しくもなった。
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思いがけぬ不幸にあい、まずあなたに悲しみを訴えたいと思ったのですが、心が落ち着かず、また涙に目も暗くなる気がして実行はできませんでした。ましてあなたはどんなに悲しんでおいでになることだろう。涙に沈んでおいでになることだろうと思いますと、手紙をあげてもお読みにはなれまいと遠慮も申しているうちに日がずんずんとたちました。人生の常なさがことごとに形となってわれらをおびやかします。この悲しみにも堪える力の許されて、私が生きていましたなら、故人の縁のあった者として何かのことは御相談もしてください。
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 などとこまやかな心で書かれたものだった。使いにはあの大蔵|大輔《たゆう》が来たのである。
「すべてを気長に考えて
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