分の軽率さから死なせたという責任も感じられた。母の現在の身分が身分であったから、葬式なども簡単にしてしまったのであろうと不快に思ったこともくわしく聞いたことによって、そうした想像をしたことが気の毒になり、母としてはどんなに悲しがっていることであろう、あの身分の母の子としてはりっぱ過ぎた姫君であったのを、陰のことは知らずに自分との縁により、姫君が煩悶をしたこともあったとして悲しんでいることかもしれぬなどと同情がされるのであった。穢《けが》れというものはこの家にないはずであるが、供の人たちへの手前もあって家の上へは上がらず車の榻《しじ》という台を腰掛けにして妻戸の前で今まで薫は右近と語っていたのである。これを長く続けているのも見苦しく思われて茂った木の下の苔《こけ》の上を座にしてしばらく休んでいた。もう山荘に来てみることも心を悲しくするばかりであろうから、今後来ることはないであろうと思い、その辺を見まわして、

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われもまたうきふるさとをあれはてばたれ宿り木の蔭《かげ》をしのばん
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 こんな歌を口ずさんだ。
 以前の阿闍梨《あじゃり》も今は律
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