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橘の匂《にほ》ふあたりはほととぎす心してこそ鳴くべかりけれ
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なんだかかかりあいのあるようなことが言われますね。
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とお返事をあそばした。宮と浮舟の姫君の関係もまたその人の死も何に基因するかも今は皆わかってしまった中の君は、姉の女王《にょおう》も妹の姫君も物思いがもとで皆若死にをしたあとに、自分だけが残っているのは感情の鈍《にぶ》い質であるからであろうか、それといってもいつまでも生きていられることかと心細く思った。宮も隠してお置きになっても、いずれは知れてしまうことであるのに、隔てを置いたままでいるのは苦しいことであると思召して、浮舟との関係を少しは取り繕って夫人へお話しになった。
「だれであるのかをあなたがどこまでも隠そうとしたのが恨めしかったために反発《はんぱつ》的にそんなことにまで進んでしまったのですよ」
など、泣きも笑いもしながらお語りになる相手が、恋人の姉であることにお慰みになるところも多かった。形式が簡単でなく、ちょっとお身体《からだ》の悪いことのあっても騒ぎがはなはだしくなり、見舞いに集まる人も多
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