して言わせたのであった。使いの来たことでまた悲しみが新しくなったし、答える言葉も何と言ってよいかわからぬ時であってみれば、人々は泣くのを挨拶《あいさつ》に代えて何とも申し出すことはできなかった。
薫は思いがけぬ愛人の死に落胆をして、情けない場所である、幽鬼などが住んでいてそうした災厄《さいやく》をしばしば起こすのでなかろうか、それと気もつかずにどうして長く宇治などへ置いていたのだろう、不快な関係がほかに結ばれたらしいことなども、ああした不用心な所へ住ませておいたために隙《すき》をうかがわせることになったに違いない、と思われるのも皆自分の非常識に原因したことであると胸が痛くなるほどにも悔まれた。御病気で専念に仏へ祈っておいでになる母宮のおそばでこんな煩悶《はんもん》をしているのはよろしくないと思い薫は京の邸《やしき》へ帰った。夫人の宮のところへは行かずに、
「たいしたことではないのですが、身辺に不幸が起こったものですから、しばらく落ち着きますまで、縁起の悪いことにもなりますから謹慎していようと思います」
などと御挨拶をしておいて、一人で人生の深い悲しみを味わっていた。浮舟《うきふね》
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