の姫君と死別した尽きもせぬ悲しみを話題にしているのであった。
「私は少年のころから、この世から離れた身になりたい、正しく仏道へ踏み入るにはどうすればよいかと願うことはそれだけだったのですが、前生の因縁というものだったのでしょうか、そう御接近したわけでもないあの方を恋しく思い始めました時から、私の信仰に傾いた心が違ってきまして、またお死なせしてからはあちらこちらの女性と交渉を始めることもして、悲痛な心を慰めようとしたこともありましたが、そんなことは何の効果もあるものでないことが確かにわかりました。私に魅力を及ぼす人がほかにはこの世にいないことがわかりましたから、好色らしいと誤解されますのは恥ずかしいのですがそうした不良性な愛であなたをお思いしてこそ無礼きわまるものでしょうが、私の望むところは淡々たるもので、ただこれほどの隔てで時々あなたへ直接その時その気持ちをお話し申し上げて、そしてなんとかお言葉をいただくことができます程度の睦《むつ》まじさで御交際することはだれも非難のいたしようもないことでしょう。私の変わった性情は世間一般の人が認めているのですから、どこまでもあなたは御安心していてく
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