く腹だたしく、ねたましくお思いになった。不安なお気持ちが静まらぬため、その日も二条の院にとどまっておいでになることになり、六条院へはお手紙の使いを二、三度お出しになった。わずかな時間のうちにもそうも言っておやりになるお言葉が積もるのかと老いた女房などは陰口を申していた。
 中納言はこんなに宮が二条の院にとどまっておいでになることを聞いても苦しみを覚えるのであったが、自分は誤っている、愚かな情炎を燃やしてはよろしくない、そうした愛でない清い愛で助けようと決心していた人に対して、思うべからぬことを思ってはならぬとしいて思い返し、このままにしていても、自分の気持ちは汲んでくれる人に違いないという自信の持てるのがうれしかった。女房たちの衣服がなつかしい程度に古びかかっていたようであったのを思って、母宮のお居間へ行き、
「品のよい女物で、お手もとにできているのがあるでしょうか、少し入り用なことがあるのです」
 とお尋ねすると、
「例年の法事は来月ですから、その日の用意の白い生地などがあるだろうと思います。染めたものなどは平生たくさんは私の所に置いてないから、急いで作らせましょう」
 宮はこうお答
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