、何かと式の用を兄のために手つだってくれるのを、大臣は少し物足らぬことに思いもした。
八時少し過ぐるころに宮はおいでになった。寝殿の南の間の東に寄せて婿君のお席ができていた。高脚《たかあし》の膳《ぜん》が八つ、それに載せた皿は皆きれいで、ほかにまた小さい膳が二つ、飾り脚のついた台に載せたお料理の皿など、見る目にも美しく並べられて、儀式の餠《もち》も供えられてある。こんなありふれたことを書いておくのがはばかられる。
大臣が新夫婦の居間のほうへ行って、もう夜がふけてしまったからと女房に言い、宮の御出座を促すのであったが、宮は六の君からお離れになりがたいふうで渋っておいでになった。今夜の来賓としては雲井《くもい》の雁《かり》夫人の兄弟である左衛門督《さえもんのかみ》、藤宰相《とうさいしょう》などだけが外から来ていた。やっとしてから出ておいでになった宮のお姿は美しくごりっぱであった。主人がたの頭《とうの》中将が盃《さかずき》を御前へ奉り、膳部を進めた。宮は次々に差し上げる盃を二つ三つお重ねになった。薫が御前のお世話をして御酒《みき》をお勧めしている時に、宮は少し微笑をお洩《も》らしになった
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