ろであるからこんなふうになっているのであろうと思召したが、さすがに不審に思召すこともあって、
「ひょっとすればあなたに子ができるようになったのではないだろうか。妊婦というものはそんなふうに苦しがるものだそうだから」
 ともお言いになったが、中の君は恥ずかしくて、そうでないふうばかりを作っているのを、進み出て申し上げる人もないため、確かには宮もおわかりにならなかった。
 八月になると、左大臣の姫君の所へ宮がはじめておいでになるのは幾日ということが外から中の君へ聞こえてきた。宮は隔て心をお持ちになるのではないが、お言いだしになることは気の毒でかわいそうに思われておできにならないのを、夫人はそれをさえ恨めしく思っていた。隠れて行なわれることでなく、世間じゅうで知っていることをいつごろとだけもお言いにならぬのであるから、中の君の恨めしくなるのは道理である。この夫人が二条の院へ来てからは、特別な御用事などがないかぎりは御所へお行きになっても、ほかへおまわりになり、泊まってお帰りになるようなことを宮はあそばさないのであって、情人の所をお訪《たず》ねになって孤閨《こけい》を夫人にお守らせになることも
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