てここに独居する決心もできそうになかった。宮から熱愛はしていながらもこのままでは自然に遠い仲になっていくかもしれぬのをどう思っているかと恨んでおよこしになるのも少しお道理に思われるところもあったので、どうすればよいかとばかり煩悶《はんもん》する中の君であった。二月になったらすぐということであったから、近づくにしたがい咲く花の蕾《つぼみ》も大きくふくらんでくるのを見ては、春の花のすべてを見ずに行くことが心残りに思われ、帰雁《きがん》のように霞《かすみ》の山を捨てて行く先は、自身の家でもないことが不安で、宮の愛が永久に変わらぬものと見なされぬ心から寂しい未来も考えられてひそかに思い悩んでいるのであった。
姉の服喪の期間は三月であって、除服の禊《みそぎ》を行なうことになっているのも飽き足らぬことに中の君は思った。母夫人とは顔も知らぬほどの縁であったから、恋しいとは思いようもなかったが、そのかわりとして子の服喪を姉のためにしたい心であったが、これは定まったことでかってにはならなかった。禊の日の女王の車、前駆を勤める人々、守刀などが薫のほうから送られた。
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はかなしや霞
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