ものだけでなく、すべての人生が恨めしく、念誦《ねんず》を哀れなふうにしていて、眠りについたかと思うとまたすぐに目ざめていた。
この早朝の雪の気《け》の寒い時に、人声が多く聞こえてきて、馬の脚音《あしおと》さえもした。こうした未明に雪を分けてだれも山荘へ近づくはずがないと僧たちもそれを聞いて思っていると、それは目だたぬ狩衣《かりぎぬ》姿で兵部卿の宮が訪ねておいでになったのであった。ひどく衣服を濡《ぬ》らしてはいっておいでになった。妻戸をおたたきになる音に、宮でおありになろうことを想像した薫は、蔭《かげ》になったほうの室へひそかにはいっていた。まだ女王の忌《いみ》の日が残っているのであるが、心がかりに堪えぬように思召して、一晩じゅう雪に吹き迷わされになりながらここへ宮はお着きになったのである。こんな悪天候をものともあそばさなかった御訪問であったから、恨めしさも紛らされていってもいいのであろうが、中の君は逢《あ》ってお話をする気にはなれなかった。宮の御誠意のなさに姉を煩悶《はんもん》させ続けていたころの恥ずかしかったこと、その気持ちを直させることもしていただけなかったのであるから今になって
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