源氏物語
橋姫
紫式部
與謝野晶子訳

−−
【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)濡《ぬ》れぬ

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)巣|守《も》り

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)[#地から3字上げ]
−−

[#地から3字上げ]しめやかにこころの濡《ぬ》れぬ川霧の立ち
[#地から3字上げ]まふ家はあはれなるかな  (晶子)

 そのころ世間から存在を無視されておいでになる古い親王がおいでになった。母方なども高い貴族で、帝《みかど》の御継嗣におなりになってもよい御資格の備わった方であったが、時代が移って、反対側へ政権の行ってしまうことになった変動のあとでは、まったく無勢力な方におなりになって、外戚《がいせき》の人たちも輝かしい未来の希望を失ったことに皆悲観をして、だれもいろいろな形でこの世から逃避をしてしまい、公にも私にもたよりのない孤立の宮でおありになるのである。夫人も昔の大臣の娘であったが、心細い逆境に置かれて、結婚の初めに親たちの描いていた夢を思い出してみると、あまりな距離のある今日の境遇が悲しみになることもあるが
次へ
全49ページ中1ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
紫式部 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング