みつか》いのひっきりなしに来ることに御遠慮がされもして、おとどめすることも申さないでいるうちに、夫人がもう東の対へ出て来ることができないために、宮のほうからそちらへ行こうと中宮が仰せられた。
 失礼であると思い心苦しく思いながらも、お目にかからないでいることも悲しくて、西の対へ宮のお居間を設けさせて、夫人はなつかしい宮をお迎えしたのであった。夫人は非常に痩《や》せてしまったが、かえってこれが上品で、最も艶《えん》な姿になったように思われた。これまであまりにはなやかであった盛りの時は、花などに比べて見られたものであるが、今は限りもない美の域に達して比較するものはもう地上になかった。その人が人生をはかなく、心細く思っている様子は、見るものの心をまでなんとなく悲しいものにさせた。
 風がすごく吹く日の夕方に、前の庭をながめるために、夫人は起きて脇息《きょうそく》によりかかっているのを、おりからおいでになった院が御覧になって、
「今日はそんなに起きていられるのですね。宮がおいでになる時にだけ気分が晴れやかになるようですね」
 とお言いになった。わずかに小康を得ているだけのことにも喜んでおいでに
前へ 次へ
全25ページ中11ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
紫式部 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング