》だったものなのだがね。私の叔父《おじ》のお亡《な》くなりになった式部卿《しきぶきょう》の宮が秘蔵しておいでになったのを、あの衛門督《えもんのかみ》は子供の時から笛がことによくできたものだから、宮のお邸《やしき》で萩《はぎ》の宴のあった時に贈り物としてお与えになったのだ。御婦人がたは深いお考えもなしに君へ贈られたのだろう」
 院はこうお言いになるのであった。御心中ではまず手もとへ置こう、死後にもとの持ち主の譲らせたい人は分明であると思召《おぼしめ》された。聡明《そうめい》な大将にはもう想像ができていて、今持ち合わせてもいるのであろうとお思いになるのであった。すべてを察しになった院のお顔色を見てはいっそう大将は打ち出しにくくなるのであるが、ぜひ伺ってみたい気持ちがあって、ただこの瞬間に心へ浮かんできたというようにして、思い出し思い出し申すように言う、
「もう衛門督が終焉《しゅうえん》に近いころでございました。見舞いにまいりました私に、いろいろ遺言をいたしました中に、六条院様に対して深い罪を感じているということを繰り返し繰り返し言ったのでございましたが、ただ御感情を害していると聞きましただ
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