あるが、宮たちがまつわってお離れにならない。宮の若君は宮たちと同じに扱うべきでないとお心の中では思召《おぼしめ》されるのであるが、女三の尼宮が心の鬼からその差別待遇をゆがめて解釈されることがあってはと、優しい御性質の院はお思いになって、若君をもおかわいがりになり、大事にもあそばすのであった。大将はこの若君をまだよく今までに顔を見なかったと思って、御簾《みす》の間から顔を出した時に、花の萎《しお》れた枝の落ちているのを手に取って、その児《こ》に見せながら招くと、若君は走って来た。薄藍《うすあい》色の直衣《のうし》だけを上に着ているこの小さい人の色が白くて光るような美しさは、皇子がたにもまさっていて、きわめて清らかな感じのする子であった。ある疑問に似たものを持つ思いなしか、眸《まな》ざしなどにはその人のよりも聡慧《そうけい》らしさが強く現われては見えるが、切れ長な目の目じりのあたりの艶《えん》な所などはよく柏木《かしわぎ》に似ていると思われた。美しい口もとの笑う時にことさらはなやかに見えることなどは自分の心に潜在するものがそう思わせるのかもしらぬが、院のお目には必ずお思い合わせになることが
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